身体で感じる体験を接続する ~院生室だより~

2024年11月7日

 こんにちは。私は幼児期の教育と小学校教育との接続(幼小接続)に関心をもち、現在、教職大学院幼児教育サブプログラムに在学しています。

 9月、西東京市の公立小学校と私立幼稚園による幼小接続実践に参加しました。
 実践の内容としては珍しく、幼稚園児と小学生との交流ではなく、幼稚園の園内環境を通して小学一年生が十分に遊ぶことを保障してみようというものでした。小学校へ入学すると、幼児期のように身体全体を使って心身共に遊びに没頭する時間が少なくなりがちです。今回の実践は、幼児期から児童期への架け橋期にある小学一年生の子どもたちにとってのそのような遊びの意義を改めて考えようとするものでした。

 ここでは、絵の具で遊ぶ子どもたちの様子を紹介させていただきます。
 最初は指先で少しずつ感触を確かめるようにフィンガーペインティングを始めた子どもたちでしたが、手のひら全体で絵の具の感触を味わうようになると、独特のぬるぬる感やひんやり感、絵の具が混ざり合う様子や手形が付く楽しさなどから思いは広がり、足の裏で絵の具の上を滑ったり、腕や脚に色を塗り始めたりと、徐々に身体全体をキャンバスや筆にして色や絵の具と関わる様子が見られるようになりました。終了時には何人もの子どもたちが顔から足まで絵の具まみれで、カラフル人間になっていました。

   小学校一年生の幼小接続実践(谷戸幼稚園にて)

 身体全体を通じて感じ、遊び込む体験は、これからの学習活動の中で、目の前の事象や問題に没頭し、学び込む活動として変換していく力の基礎となるのではないでしょうか。

 私自身は、元小学校教員の立場から、今回のような経験の後に図画工作で絵の具を使うとき、絵の具との新しいかかわりや表現が見られるのかというところに関心を持ちましたが、企画した先生方は、図画工作だけに焦点化するのではなく、子どもの生活全般、成長全体を捉えてみていくことに意義があるとおっしゃっていました。小学校教育での学びを教科の枠に基づいて理解しようとしていた自分に改めて気づかされました。

 子どもたちが環境や素材と一体的に活動する姿が見られ、子どもの成長全体を見ようとする幼児教育の魅力を再認識する貴重な体験となりました。